遺言

1.遺言書の作成が特に必要なケース

(1)妻(夫)の将来が心配な方

配偶者の『住むための家』と『まとまった生活資金』は必ず準備が必要

(2)賃貸物件(駐車場)をもっている方

遺産分割が調うまでの間の家賃収入等は、相続人が法定相続分で取得することになります。(各人が確定申告も必要)

(3)自社株式をもっている方

遺産分割が調わないと、事業承継がスムーズに進まなくなります。

(4)同居している子どもがいる方

別居している子どもから、その同居していた自宅の売却を迫られるケースが増加しています。

(5)社会貢献をしたい方

遺言によって寄付することも可能です。


2.遺言書作成の注意点

① 本当に自分の思いを書いていますか? 

② 誰に気を遣う必要もない!?

③ 判断能力が衰えないうちに作成する

④ 日付を明確にする

⑤ できれば、遺留分を考慮しておく

⑥ 付言事項は必ず書く

⑦ 夫婦で作成すべき

⑧ 納税資金の手当て

⑨ 受遺予定者が先に死亡した場合に備えて補充遺贈をしておく

⑩ 遺言書を書き換えるときは、前の遺言書の内容を撤回する。


3.遺言の種類

自筆証書遺言
(保管制度を利用しない場合)
公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法 自分で遺言書の全文・氏名・日付を自書し押印する。 ※財産目録のみ自書しなくてもよい 本人と証人2名で公証役場へ行き作成 本人が証書に署名押印した後、封筒に入れ封印して公証役場で証明してもらう
証人 不要 2人必要 2人必要
保管方法 自分 原本は公証役場 正本は遺言執行者 謄本は遺言者 自分
費用 0円 必要 (財産額と相続人数等によります) 11,000円
家庭裁判所の検認 必要 不要 必要
メリット 作成が簡単かつ費用が掛からない 遺言内容を秘密にできる 公証役場で原本を保管 検認手続き不要 内容について疑義が生じにくい 紛失しても再発行可能 遺言内容を秘密にできる パソコンでの作成・代筆可能(ただし、自署捺印が必要)
デメリット 家庭裁判所の検認手続きが必要 紛失・偽造の恐れがある 内容について疑義が生じる可能性あり 費用が掛かる 家庭裁判所の検認手続きが必要 遺言書の存在は明らかになるが、公証役場での保存はされない 内容について疑義が生じる可能性あり(公証人は内容は確認しない)

4.自筆証書遺言の方式緩和について

(1)方式緩和の概要

自筆証書遺言を作成する場合には、遺言者が、遺言書の全文、日付及び氏名を自書して、これに印を押さなければならないものと定められています。
今回の改正によって、自筆証書に相続財産の全部又は一部の目録を添付するときは、その目録については自書しなくてもよいことになります。
自書によらない財産目録を添付する場合には、遺言者は、その財産目録の各頁に署名押印をしなければならないこととされています。

(2)財産目録の形式

財産目録の形式については、署名押印のほかには特段の定めはありません。
したがって、書式は自由で、遺言者本人がパソコン等で作成してもよいですし、遺言者以外の人が作成することもできます。
また、例えば、土地について登記事項証明書を財産目録として添付することや、預貯金について通帳の写しを添付することもできます。
いずれの場合であっても、財産目録の各頁に署名押印する必要がありますので、注意してください。

(3)適用時期

平成31年(2019年)1月13日以降に作成される自筆証書遺言から適用されます。


5.自筆証書遺言の保管制度の創設

(1)制度の概要

自筆証書遺言を作成した方は、法務局(遺言書保管所)に遺言書の保管を申請することができるようになります。
遺言者の死亡後に、相続人や受遺者は、法務局で遺言書が保管されてるかどうか調べること、遺言書の写し(遺言情報証明書)の交付を申請することができ、
また、遺言書を閲覧することもできます。

(2)保管制度のポイント

  • 法務局に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要
  • 遺言書の閲覧や遺言情報証明書の交付がされると遺言書保管官(法務局の事務官)は、他の相続人等に対し、遺言書を保管している旨を通知します。
  • 法務局では、遺言書の適合性(署名・押印・日付の有無等)を外形的に確認等

(3)適用時期

令和2年(2020年)7月10日から適用されます。

(4)その他

具体的内容については、施行日(令和2年7月10日)までに定められます。


1.見直しのポイント

自筆証書遺言の方式緩和

自筆証書に、パソコン等で作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書を目録として添付したりして遺言を作成することができるようにする。


2.現行制度

自筆証書遺言を作成する場合には全文自書する必要がある。

イラスト:全部の手書きは負担が重い…

現行法の規律(平成31年1月12日まで)
遺言書の全文を自書する必要がある。

問題点
全文の自書は相当な負担。(特に、財産が多数ある場合)

イラスト:財産目録も全文自書しなければならない。

財産目録も全文自書しなければならない。


× パソコンで目録を作成

× 通帳のコピーを添付


3.制度導入のメリット

自書によらない財産目録を添付することができる。


 パソコンで目録を作成

 通帳のコピーを添付


財産目録には署名押印をしなければならないので、偽造も防止できる。

※法務省ホームページ参照(当時)

1.法律で決められている相続分

相続人 法定相続分

第1順位
配偶者 1/2
12 おのおのの数により1/2を均分

第2順位
配偶者 23
父・母 13 おのおのの数により1/3を均分

第3順位
配偶者 34
兄弟姉妹 14 おのおのの数により1/4を均分
配偶者のみ 全部

 原則:遺産は相続人の共有 

それぞれの単独所有とするため遺産分割する! !

2.贈与は持ち戻して計算される!?

(1)「遺産分割」で持ち戻しする特別受益の範囲とは?

相続税法(19条、21条の15) 民法(903条)
① 相続開始前3年以内に贈与により財産を取得した者された贈与財産のみ(19条)
だだし、贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る

② 「相続時精算課税制度」により贈与されたものはすべて(21条の15)
① 特別受益者の相続分の計算:
年数制限なくすべて加算

② 特別受益の範囲
●遺贈・・・遺言で贈与された財産
●生前贈与
・婚姻のための持参金・支度金
・養子縁組のための持参金・支度金生計の資本のための贈与(独宣資金、住宅取得資金、海外留学資金、他の相続人より高額な学費等も含まれうる)
・憐務引受けにより発生した求償権の放棄

(2)贈与税の非課税財産の持ち戻し

相続税法(19条) 民法(903条)
贈与税の計算において通常必要と認められる範囲のものは非課税

相続税の計算上も非課税財産については当然、相続税の課税財産に持ち戻さない
学費・結婚資金その他の生活費などについても対象となり、生計の資本として財産分けの際に持ち戻す。

※税法とは概念が大きく異なっている。

(3)持ち戻しをする時の価額

相続税法(19条) 民法(904条)
持ち戻す際の評価額については相続税法においては贈与時の課税価額
民法上は相続関始の時なお原状のままあるものとみなした揚合の価額。

民法では生前に贈与した財産についても相続時の評価額に置きなおして財産分けが決まるので、贈与してもしなくても結果は原則同じ。

遺留分とは何か?

遺留分権利者について

相続人 相続人全体の遺留分 相続人 相続人全体の遺留分
配偶者と子


2分の1

※兄弟姉妹には

遺留分なし

配偶者のみ・子のみ 2分の1
配偶者と直系尊属 直系尊属のみ 3分の1
配偶者と兄弟姉妹 兄弟姉妹のみ 遺留分なし

※相続人が複数いる場合は、その者の法定相続分を乗じた割合となる。

遺留分の侵害額請求のできる期問

(1)

相続の開始があったことを知った日 かつ、
侵害額請求すべき贈与叉は遺贈があったことを知った日

から1年以内


(2)

相続開始の時から10年を経過する日


過去の贈与が明らかになれば、明らかになった時点から1年以内は遺留分侵害額請求の対象となる!!


権利行使したことを確実に証明できるようにしておくこと!

(例:配達証明付内容証明郵便等で受遺者等に通知)


遺留分の算定基礎となる金額は?

相続税法 民法(改正法)
① 相続開始前3年以内に相続人にされた贈与財産のみ

ただし、贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。

② 「相続時精算課税制度」により贈与されたものはすべて

① 相続人への特別受益の相続分の計算:

年数制限なくすべて加算
⇒双方が遺留分を害することを知らない場合は10年分

② 特別受益の範囲
●遺贈・・・遺言で贈与された財産
●生前贈与
・婚姻のための持参金・支度金
・養子縁組のための持参金・支度金
・生計の資本のための贈与(狼立資金、住宅取得資金、海外留学資金など)

現行(改正法)

(税法も同様に改正)

  • 名称を「遺留知晏害額請求権」へ変更し、遺留分を現物ではなく金銭請求とする。(民法第1046条)
  • 遺留分算定の基礎となる相続人への贈与は10年以内のものに限る
    (ただし、遺留分を侵害すると知って行った贈与は10年以上前のものであっても対象となる)

  • 改正前の原則と例外を逆転させた内容
    遺留分権利者等からの不必要な遺留分登記がされるといった問題への対応策になる

  • あえて遺留分を侵害するような贈与でない通常の生前贈与であれば、遺言さえあれば10年経過で遺留分の際には持ち戻しを主張されない! (遺言がなく遺産分割協議になる場合は、通常通り特別受益として年数の制限なく持ち戻されるので、注意)

  • ただし、遺留分権利者の実際に請求できる金額を計算する際は全ての遺贈、特別受益の額を控除する(遺留分計算の際は持ち戻しに10年間の期間制限がないことに注意)

所得税基本通達の制定について

法第33条<譲渡所得>関係


令和元年7月1日以後に開始した相続について、

遺留分を金銭ではなく物で渡せば譲渡所得税が課税!!

(参照:旧所法151の6①の三、所基通33-1の6)


(遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転)

33-1の6 民法第1046条第1項《遺留分侵害額の請求》の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産(当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求の基因となった遺贈又は贈与により取得したものを含む。)の移転があったときは、その履行をした者は、原則として、その履行があった時においてその履行により消滅した債務の額に相当する価格により当該資産を譲渡したこととなる。
(注)当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求をした者が取得した資産の取得費については38-7の2参照

 令和元年7月1日に施行済